読書どころではない不安

友人は先日、家人の付き添いで、総合病院に行ったそうです。彼女はどこに行くのにも、小説を持ち歩く人。もちろん、隙間時間に読書ができることを狙っているのです。しかしその時ばかりは、待ち時間がたくさんあるにも関わらず、とても本のページをめくる気持ちにはなれなかったと言っていました。曰く「検査結果が心配で、それどころではなかった」のですって。
なんでも家の人は、個人クリニックに行ったところ「ここでは診れないから、大きな病院に行って」と紹介状を貰ったのだそうです。初めての場所で、今までやったこともないような検査をたくさんする家族。広い場所で迷わないように気を付けて、一緒に廊下を歩きながら、あるいは長椅子で、検査室に入った家族を待ちながら、自分の心臓も常にドキドキしていたと言っていました。でも、そんな不安を見せるわけにはいかないので、必死に内頬をに力を入れて、真顔を見せていたのだとか。
私が話を聞いた時には、すでに諸々の結果は出ていて、命にかかわる病ではないことはわかっていました。しかしそれまでの間は、本当にさぞ大変だったことでしょう。いつもなら心を落ち着けてくれる読書が、できないほどの動揺。それを経験し乗り越えた彼女を、尊敬します。

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