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物語の世界に想いを馳せる

私の趣味の一つに、観劇があります。役者である友人の公演を観に行ったのがきっかけで、友人が所属する劇団の公演に足を運ぶようになりました。
その中でも忘れられないのが、友人が出演していた一人芝居、のようなものです。近代短編小説を題材にした公演でしたが、役者はただ朗読するのではなく、地の文も登場人物のセリフも発しながら、舞台上の道具を作中の様々なものに見立てて動き回るのです。同じ作家の作品を三つ、知っている作品もありました。舞台のセットはほとんど同じです。しかし役者のほんのちょっとの視線や動き、そしてたった一言が、観る側に想像力を掻き立て、文章を読むだけでは想像しきれなかった景色が目の前に浮かび、今まで感じたことのない気持ちで作品に触れることが出来ました。俳優が、一人で舞台上に物語の世界を立ち上げる試み、と劇団の主催は言います。『一人芝居』という言葉では足りないくらい、とても深い公演でした。
観劇を終えた私は、あの作家が何十年も前にこんなに面白い作品を書いていたのだと驚きでいっぱいでした。原作を手に入れるべく、最寄りの大きな本屋さんに立ち寄りますが、目当ての本は売り切れ。なんとその日は4軒も本屋を梯子してやっと手に入れました(笑)