漫画と引き換えに得た喜び

友人が、お母さんの誕生日に高価な座椅子をプレゼントしたそうです。年をとって膝が悪くなって、立ち上がるのが大変そうだから、と言っていました。なんて素敵な親孝行でしょう。そんな話を聞いて、そういえば私も子供時代、母にエプロンを贈ったなあと思いだしました。お小遣いは限られているけれど、誕生日にどうしても喜んでほしかったので、毎月買っていた雑誌を我慢してお金をためたのです。
当時の私にとっては、その雑誌は本当に宝物のようなものでした。部屋にどんどんたまっていっても、廃品回収には出さず、何年分も保存して読み返していたのです。そのひとつには、コミックスを買えなかったというのもあります。だって毎月たくさんの作品が読める雑誌と、そうではない漫画だったら、前者を選びたいじゃないですか。でもそれを我慢したのだから、昔の私は頑張ったなあ、と思いますね。もしかしたら、今よりずっと孝行娘だったかもしれません。
母はそのエプロンを修理しながら、何年も使っていました。ついにボロボロになってしまった時には、わざわざ「もうこんな風になっちゃったから捨てるけどごめんね」なんて言いに来てくれたのですよ。あの時は、数か月の間、漫画を我慢してプレゼントして良かったと思いました。

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