ひとりくつろぐ老婦人

先日出掛けたカフェで、美しい老婦人を見ました。いかにも上品な丈の短いジャケットにロングスカートを着た彼女は、隅の席でコーヒーを飲みながら、文庫本を読んでいました。若者がいっぱいの店内です。誰かと待ち合わせかしら。それともここのコーヒーを飲みに来たのかな。美味しいって有名だから、気持ちはわからなくもないな、と想像は広がります。
私はココアを飲みながら、失礼かと思いつつも、婦人を観察し続け……気付いたのです。彼女の持っている布製のポーチと、ブックカバーに、お揃いの記事が使われていることに。お手製でしょうか。それともセット購入?薄い紫の布地に、小さな花の刺繍が施されたそれは、ずいぶん手がかかっていそうに見えました。あんな綺麗なものを愛用できるなんて、羨ましい限りです。
それから十五分ほどたった頃でしょうか。ついに老婦人が立ち上がりました。そうか、ひとりでくつろぎに来たのかと納得していたら「おばあちゃん、待った?」と聞こえる子供の声。お孫さんと待ち合わせだったのですね。いかにも悪戯盛りの年齢の男の子が、おばあちゃんに抱き付きます。その時の彼女の顔は満面の笑みで、読書中の静けさはなくなっていました。ずいぶんと素敵なものを見せていただきました。

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